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人工骨によるインプラント~骨不足でもできるインプラント手術

インプラント治療では、顎骨の状態が重要になります。もし、骨の状態が悪い場合に使用されるのが人工骨です。顎骨の状態が悪いと、インプラント体を埋入してもオッセオインテグレーション(骨とインプラント体の強固な結合)が得られない場合があり、治療自体が失敗することがあります。そのようなことを防ぐためには、骨の再生を促進させて骨量を増加させる人工骨での治療が重要な役割を担います。
今回は人工骨とはどのようなものなのか、その種類や治療方法なども併せてご紹介していきましょう。

人工骨を使えば骨不足の人でもインプラント治療ができる

人工骨の種類

骨の量が少なくなっている場合には、インプラント治療が困難になります。そこで、骨を補填するために人工骨を使用します。人工骨の形状としては、ブロックや細胞片、顆粒状のもがあります。イメージとしては、骨そのものの代わりをするというよりも、骨の再生を促進させるイメージが強いかもしれません。どのような種類があるのかを以下にご紹介します。

自家骨

自家骨(じかこつ)とは、自分の骨のことです。人工骨とは違いますが、骨を補填する方法として「自家骨移植」がおこなわれることがあります。骨を採取する部位は顎の骨の一部(オトガイ、下顎枝など)が多く、歯科クリニックで採取してブロック状にしたり、粉砕したりして使用します。口腔内であれば歯科クリニック内で採取できますが、事故などで大きく顎が破損しているケースでは腰の骨の一部である腸骨などを使用することもあります。その場合には入院して全身麻酔下で採取する手術をします。
自分の骨を移植しますので、移植材としては非常に優れているのですが、採取する手術をおこなうことで患者さんの負担になります。

他家骨

日本では販売されていませんが、ご遺体から骨を採取して凍結乾燥などの処理をした人工骨です。同じヒト由来の骨補填材ですから、自家骨に次いで移植材として優れているといわれています。欧米では使用されているようですが、感染症などの可能性があると指摘されています。

異種骨

牛などの骨を加工した骨補填材です。タンパク質を除去してミネラル成分のみの状態で使用されます。骨再生の基礎として使用されます。

合成代用骨

化学的に合成した骨補填材です。さまざまな種類がありますが、よく使用されているのは「ハイドロキシアパタイト(HA)」と「リン酸三カルシウム(β─ TCP)」です。HAは生体親和性が高く骨の組織と素早く結合しますが、骨の組織自体には変化しません。一方でβ─ TCPは、比較的早期に吸収されて骨の組織に変化するといわれています。

幹細胞を用いた骨再生法も実用段階

ご紹介したように骨補填材としては、自家骨が最も適しているといわれています。しかし、手術侵襲による患者さんの負担が問題になります。その問題点を解決できる可能性があるのが、「幹細胞」を用いた骨再生治療です。この方法はまだ、一部の歯科クリニックでしか実施されていませんが、手術侵襲が少ない方法として知られています。
幹細胞とは人間の各部位に分化する能力を持った細胞で、これを骨の細胞として培養して、骨の再生に使用するものです。幹細胞は患者さんの骨髄液から採取できるので、骨採取よりも負担が軽減できます。

人工骨を利用するケース

人工骨を使用する症状

人工骨を使用する症状としては、顎骨がインプラント治療をおこなうには骨量が不足しているときです。骨量が不足する原因としては、歯周病や、歯を失った期間が長いことがあげられます。歯周病の場合には、歯周病菌によって歯槽骨(しそうこつ:顎骨の一部で歯が生えている突出している部分)の細胞が破壊されてしまいます。そのときに骨を健康に保つためのサイクルが崩れて、「骨吸収」が過剰に発生して骨をつくる「骨形成」が起こりにくくなって骨が痩せてしまいます。
歯を失った期間が長い場合には「噛む」刺激がその部位になくなるため、やはり骨吸収と骨形成のサイクルが崩れてしまい骨の量が少なくなってしまうのです。ですから、歯を失った場合には、インプラント治療に限らず、なるべく速やかに人工歯を入れることを考えてください。

骨を補う手術について

骨を補う方法には多くの種類があります。上顎と下顎でも違いますし、骨が垂直方向に足りないのか水平方向に足りないのかによっても違ってきます。代表的な手術方法を下記にご紹介します。

GBR法(骨再生誘導法)

骨の再生を誘導するために骨が足りない部分に遮断膜を用いて、隣接する骨の細胞を足りないスペースに侵入させ骨の再生を誘導していく方法です。具体的には骨の足りない部分にβ─ TCPや自家骨を粉砕したものを添加して、遮断膜で覆います。

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上顎洞底挙上術(サイナスリフト・ソケットリフト)

上顎洞底挙上術(じょうがくどうていきょじょうじゅつ)は、上顎洞に近接している上顎の奥歯付近でおこなわれる方法です。名称のとおり、上顎洞を上に持ち上げて顎骨との間にスペースをつくり、自家骨や合成代用骨などを添加して骨組織を増殖させるものです。上顎洞を持ち上げる術式には2種類あります。ひとつは歯の側方からアプローチするサイナスリフト、もうひとつはインプラント体を埋入する部分からアプローチするソケットリフトです。患者さんの症状からどちらにするか検討されますが、サイナスリフトのほうが十分に骨の増殖を望める反面、手術の侵襲が大きく負担が大きいとされています。

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スプリットクレスト

上顎前歯部などに用いられる方法です。骨の幅が足りないときに骨を少しづつ割って、インプラント体を埋入していきます。骨を割った間に骨補填材を使用します。

人工骨は安全なのか

病原性などが問題となる場合も

人工骨の安全性について、一番気になることは病原体です。日本国内では販売されていませんが、ご紹介した他家骨では未知の病原体に感染する危険もゼロではありません。もちろん、放射線による処理などを実施していますので、ほぼ安全なことはアメリカ食品医薬品局(FDA)でも確認されています。しかし、日本で販売されていないのは、ご遺体から採取した材料ということで、倫理的な問題もあるのかもしれません。
また、異種骨の場合もほとんどが牛由来ということで、以前問題となった、狂牛病やクロイツフェルト・ヤコブ病などと結びつける考えもあります。しかし、こちらも、対策としては300℃以上の高温で処理していること、タンパク質を存在しない状態にしていること(病気の原因は異常なタンパク質のため)によって、安全性は確立されています。

薬事承認について

安全面では、事故がないことも重視されます。人工骨は臨床的にはインプラント治療に有効なことはわかっていますが、実は一部を除いて厚生労働省の薬事承認は未承認となっています。もちろん、未承認だからといって、使用できないとか危険なものだとかではありません。他家骨を除けば異種骨、合成代用骨は歯周病などほかの歯科分野や医科分野では承認されているもので、インプラント治療では未承認ということです。
現在、インプラント治療用として薬事承認されているのは「ジーシー サイトランス グラニュール」という製品だけです。九州大学と歯科メーカーの大手株式会社ジーシーが共同開発したもので、歯の無機質成分である炭酸アパタイトを原料としたものです。

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骨造成には時間がかかる

骨造成だけを実施する場合と、インプラント手術と同時に実施する場合

インプラントを埋入するのに、骨が足りない場合には人工骨を使用して、骨造成手術をおこないます。基本的には骨造成手術を実施して、4ヶ月から6ヶ月ほど骨ができるのを待ってからインプラント埋入手術を実施する流れです。ですから、2回法で手術する場合には計3回の手術が必要になり、治療期間も1年程度必要になります。
しかし、現在では、インプラント埋入手術と同時に骨造成をする場合も増えてきました。どのような方法で実施するかは症状によりますが、同時におこない1回法でできれば手術は1回で済み、治療期間も短縮できることになります。

時間がかかる場合はあるが、より安全性が高まる

上記のように骨造成をインプラント手術と同時に実施することは、骨がどれだけ足りないかによります。希望をしても症状により実施できないことがありますので、注意してください。
現在のインプラント治療はより確実に成功させることを重視します。インプラントを埋入してみても、骨量不足のため脱落してしまうことは避けなければなりません。骨造成手術が別に必要な場合には、時間がかかるかもしれませんが、より確実にインプラント治療をおこなうためでもあるのです。

骨が少なくてもインプラントができる可能性

さまざまな骨造成がおこなわれている

国内でインプラント治療がおこなわれた当初は、骨量が不足している場合治療を受けられないことも多かったといいます。しかし、現在ではさまざまな歯科材料、技術の進歩によって骨造成法が確立されて多くの人がインプラント治療を受けられるようになっています。「骨が少ないからインプラントはできない」という論理は、現在では少なくなってきているのです。

自分の状態に不安があれば、まず相談を

しかし、どのような症状でも必ずインプラント治療がうけられるわけではありません。自分の状態に不安があれば、まずはインプラント治療をおこなっている歯科クリニックに相談してみましょう。骨が少なくてもインプラント治療ができる方法は、ほかにも多くありますから、専門的な知識があるクリニックを選んでみてください。

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