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インプラントのための骨造成とは?骨量不足を補う治療のメリット、流れと種類

骨造成とは

骨造成とは、顎の骨の量や強度を増すためにする治療のことです。

インプラントを適応可能にするために骨を増やす治療法

インプラント治療を行うには、土台となる顎の骨に十分な厚み・高さ・硬さが必要です。

しかし、加齢・歯周病・長年の入れ歯の使用などで、顎の骨が減少して十分な量がない場合、トラブル発生の危険性からインプラント治療が不適応となるケースがあります。

このような症例の場合、顎の骨を増やす骨造成を行えば、顎の骨の厚みや硬さを確保することが可能です。

骨造成で骨の量を増やすことで、インプラント治療の適応となり安全に治療を受けられる環境にできます。

骨造成が必要となるケース

骨造成が必要となるケースは大きく3つのケースがあります。

以下に、骨造成が必要なケースを解説していきます。

支えとなる顎の骨が不足している場合

インプラントをするには、支えとなる顎の骨が十分に残っている必要があります。

インプラントは、歯の根っこの役割をするネジを顎の骨に埋め込みます。

ネジを埋め込むためには、顎の骨に十分な高さ・厚み・硬さが必要です。

インプラントを埋めるには、周囲の骨の高さが10㎜以上・幅は6〜8㎜以上あることが理想的。

そのため、顎の骨が足りない場合、骨造形して顎の骨の量を増やす必要があります。

顎の骨が不足する原因

顎の骨の厚みや骨量が不足する原因として、主に以下があげられます。

歯周病

歯周病は細菌性の病気で、進行すると顎の骨を溶かしてしまう危険性があります。顎の骨の厚みや骨量が不足してしまう最も多い原因は、歯周病であるといわれています。

入れ歯の不適合

自分の歯に合っていない入れ歯を使用していると、歯肉や骨部分に過剰にストレスがかかります。そのため、顎の骨が薄くなってしまうことがあります。

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血管・神経などの組織を傷つけるリスクがある場合

顎の骨の量が十分でない場所にインプラントを埋め込むと、血管や神経などの組織を傷付けるリスクが高くなります。

インプラント手術で注意が必要なのは、上あごにある空洞「上顎洞」下あごを通る血管・神経の管「下顎管」を傷付けないようにすることです。

これらの組織を傷付けると、大量出血の恐れや、しびれ・炎症などの後遺症が起こる場合があります。

骨の量が十分でないと、組織との距離が近くなり手術中に傷付けるリスクが高まります。

CT撮影を行って上顎洞や下顎管への距離が近く傷付けるリスクがあると判断された場合、骨造成してリスクを回避する必要があります。

見た目の仕上がりが悪くなると予測される場合

骨の量が不十分なままインプラントすると見た目の仕上がりが悪くなる可能性があります。

インプラント部分の骨の量が、隣接の歯の骨の量と比較して少ない場合、歯茎の位置は周囲より低くなるのが一般的です。

周囲より低い位置に歯茎があると人工の歯を入れる際、歯を長くする必要があります。

しかし、歯を長くすると周囲の歯と比較して見た目が不自然な印象になるでしょう。

前歯などの見た目の仕上がりも配慮すべき部位の場合、周囲との調和をはかるために骨造成して顎の骨の量を増やすことがあります。

骨造成のメリット

骨造成すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。
以下に、骨造成するメリットを解説していきます。

安全にインプラントの治療が受けられる

骨造成すると、骨の厚さや強度を確保することができるのでインプラント治療を受けられるメリットがあります。

インプラント治療は、始めにレントゲンやCTを撮影してインプラントの適応か判断していくのが一般的です。

その際、骨の量や強度が足りないことから、インプラントを支えられない・手術にリスクがあると判断された場合、治療適応外と診断されるケースも少なくありません。

ただし、骨造成を行えば骨の量や強度の確保が可能です。
骨造成でインプラントを十分に支えられる・手術にリスクがない状態にできれば、インプラント治療の適応となります。

また、骨造成するとインプラントをしっかりと支えられるので、予後も安定して長期的に使用できることが期待できるでしょう。

自然な歯茎の形態にできる

骨が少ない部分の歯茎は、骨が十分にある部分と比較すると歯茎の位置は低くなるケースが多いです。

インプラント治療する際、そのまま低い骨の位置で行うと、歯茎のラインは崩れインプラントの歯は長くする必要があるので、不自然な口元になってしまいます。

骨造成して、顎の骨の高さを周囲と揃えれば歯茎のラインが整うので、歯の長さも周囲と合わせられるので自然で美しい口元に仕上げることが可能となります。

骨造成のデメリット

骨造成には多くのメリットがありますが、デメリットもあります。

骨造成する際には、事前にデメリットを理解しておくとトラブルなくスムーズに治療できるでしょう。
以下に、骨造成のデメリットを解説していきます。

追加で費用がかかる

骨造成は保険適応外の自由診療です。

インプラント治療の費用に加えて骨造成の費用も加算されるので高額な費用が必要になります。

インプラントの1本あたりの平均額である35万円〜40万円に骨造成の費用も加算されるので、予算に限りのある方にとってはデメリットになると言えるでしょう。

手術回数が増え治療期間も長くなる

骨造成が必要なケースでは、選択する種類によって、先に骨造成を行って十分な骨の量を確保してから、インプラント治療を開始する方法があります。
選択する種類によっては、手術回数が増えるため身体的負担が多くかかります。

また、骨造成の手術後は、増やした骨が組織と結合して硬く安定するのを待つので、治療期間も長くなるのが一般的です。

高齢で手術が負担になる・インプラント治療を早く終わらせたい方にとってデメリットになると言えます。

骨造成の一般的な治療の流れ(GBR法の場合)

自家骨の採取

自分の骨を用いて骨造成する場合、始めに自家骨を採取します。

自家骨は、骨の量が多い下アゴの先端部分もしくは下アゴの奥歯の外側から採取するケースが多いです。

採取した骨は、後に充填するために細かく砕いた状態にしておきます。

インプラントを埋め込む

通常のインプラント手術と同じように、インプラントする予定の部分の歯茎を切って、顎の骨にドリルで穴を開けインプラントを埋め込んでいきます。

骨造成する方は、骨の量が少ないのでインプラントを埋め込んでも、骨に完全には収まらずに露出した状態になる場合が多いです。

自家骨・骨補填材を顎の骨に充填する

骨が不足している部分に、採取した自家骨または骨補填材を充填。

充填が完了したら、骨がしっかりと造成されるように、歯茎の侵入を防ぐメンブレンと呼ばれる人工の膜で覆います。

歯茎の縫合・骨の再生を待つ

骨を充填して、メンブレンで充填部分を覆ったら歯茎を縫合して元の状態に戻します。

骨造成の術後は個人差がありますが、骨の再生に6ヶ月〜10ヶ月ほどの期間がかかるのが一般的です。

期間を空けることで骨が再生され、インプラントと骨がしっかりと結合されます。

その間、手術部位に強い刺激があると、骨の再生が上手く出来ないリスクが高まるので注意が必要です。

人工の歯を装着

骨の再生が行われインプラントがしっかりと固定されたら、人工の歯を取り付けていきます。

人工の歯は、周囲とのバランスを見ながら自然な状態になるように、色味や歯の形などを調整して作成します。

希望の色味や形がある方は、事前にドクターに伝えておくとスムーズに治療を進めることが可能です。

骨造成の種類

一般的によく採用される骨造成としては、大きく4種類の方法があげられます。

  • GBR法(骨誘導再生法)
  • ソケットリフト
  • サイナスリフト
  • スプリットクレスト法(歯槽堤分割術)

以下に、それぞれの手術方法について紹介していきます。

GBR法(骨誘導再生法)

GBR法は、Guided Bone Regenerationの略で失った顎の骨と歯を結ぶ歯槽骨の再生を促す治療方法です。
インプラント手術を予定している部分の骨の幅や高さが足りない場合に行います。

骨が不足している部分に、事前に採取した自分の骨である「自家骨」もしくは、人工の「骨補填材」を充填します。

骨の再生には個人差がありますが3ヶ月〜6ヶ月の期間が必要で、歯茎の再生より遅いのが特徴です。

そのため、充填した部分の骨がしっかりと再生されるように、メンブレンと言われる人工の膜で周囲を覆い歯茎の侵入を防いでいきます。

メンブレンは体内に吸収される吸収性と非吸収性のものがあり、再生する骨の量が多いケースでは非吸収性のメンブレンを用いることが多いです。
非吸収性のメンブレンを用いた場合は、骨の再生が確認できたら取り除く手術をします。

GBR法は、インプラント手術と同時に行うケースと、インプラント手術とは別で行うケースがあり、再生する骨の量が少ない症例ではインプラント手術と同時に行う方法が採用されます。

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ソケットリフト

ソケットリフトは、上の顎の骨の厚みが足りない症例のうち骨の厚みが5㎜以上ある場合に採用される骨造成術です。

上の歯にインプラント治療を行う場合、注意が必要なのが「上顎洞」と呼ばれる顎の骨の上にある大きな空洞。

上顎洞を傷付けてしまうと上顎洞炎を引き起こす原因となるため、インプラント手術する際には上顎洞を傷付けないように行うことが重要です。

ソケットリフトは、インプラント手術と同時に行われるケースが一般的です。

ソケットリフトの治療の流れ

ソケットリフトの治療の流れは、インプラント手術と同様にインプラントを埋め込む部位に穴を開けていきます。

その際、上顎洞から1㎜の部分まで到達したら専用の機械を用いて残りの骨を取り除くと上顎洞の周囲にあるシュナイダー膜と呼ばれる組織に到達。

シュナイダー膜を傷付けないように自家骨・骨補填材を充填して上顎洞の底の部分を挙上させて十分な高さがでたらインプラントを埋め込みます。

ソケットリフトは、インプラントを埋め込む部分から行う手術方法なので負担が小さく術後の細菌感染のリスクが低いことがメリットです。

サイナスリフト

サイナスリフトは、ソケットリフト同様に上の顎の骨を増やすために行う方法です。

ソケットリフトとの違いは、骨の厚みが5㎜以下の場合に採用される方法で、インプラント手術とは別で手術が必要になります。

サイナスリフトの治療の流れ

サイナスリフトの治療の流れは、骨を増やしたい頬側の歯茎を切って専用の機械を使用して骨に小さい穴を開けます。

上顎洞の周囲にあるシュナイダー膜を傷付けないように骨と粘膜をはがしてスペースを確保したら自家骨・骨補填材を充填していきます。

充填が完了したら、穴を開けた部分の骨もしくはメンブレンで覆い歯茎を縫合して手術は完了です。

手術完了後は6ヶ月~8ヶ月の静養期間をおいて骨の再生を待ちます。

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スプリットクレスト法(歯槽堤分割術)

スプリットクレスト法は、顎の骨の幅が不足している場合に行う方法です。

日本語表記では「歯槽堤分割術」と呼ばれ、その名のとおり歯槽骨を分割して広げることでインプラントを設置するスペースを確保します。

スプリットクレスト法の治療の流れ

スプリットクレスト法の流れは、まず器具で骨に切り込みを入れ、骨を二分割させます。
骨の分割に、従来は細いノミのような器具で施術を行っていましたが、現在は超音波機器を使用し、患者の方の身体に負荷のかからない形で施術を行う歯科も増えています。

徐々に器具で切り込みの幅を広げ、骨の幅をインプラントを埋入できる広さまで広げます。

広げた切込みにドリルで穴を空け、インプラントを埋め入れした後、骨補てん材を入れてインプラントと骨との間のスペースを埋めます。

約3~4ヶ月で広げた骨が固まるといわれています。

まとめ

骨造成は顎の骨の不足からインプラント治療適応外と判断された場合に有効な治療法

骨造成は、インプラント治療を行う際に、骨の厚さ・高さ・硬さが不十分な方に適応される治療法です。

インプラントと同様に保険適応外の自費治療になるのでインプラント治療と骨造成の費用が必要になります。

骨造成には、HBR法・ソケットリフト・サイナスリフトの3つの方法があり医師の判断により適切な骨造成法が選択されるのが一般的です。

骨造成すると、骨が再生されインプラントを支えるための十分な骨が造られるので、安全にインプラント治療を受けられます。

また、骨造成すると骨の高さや厚みを周囲の骨と同じような形態に整えられるので、自然で美しい仕上がりを期待できるでしょう。

顎の骨の量が不足しているためインプラント治療の適応外と言われた際には、骨造成を検討してみてはいかがでしょうか。

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