給湯器のヘッダーとは?ヘッダー内蔵型と外付け型の違いを徹底解説
給湯器のヘッダーは、給湯・給水に使われる部品であり、快適な水回りに欠かせないパーツのひとつです。また給湯器ヘッダーを使うことで、お湯を使える場所を増やしたり、床暖房も使えるようになります。
この記事では、給湯器ヘッダーの仕組みや設置方法、給湯器のヘッダー内蔵型と外付け型の違いについて説明します。
給湯器ヘッダーとは?その役割
給湯器ヘッダーとは、ヘッダー工法で使われる給湯用部品のことです。ヘッダー工法とは、お湯の流れを1本から2~5本へと分岐する配管工事のことで、給湯以外にも水を分配する「給水器ヘッダー」と呼ばれる部品もあります。
例えば、電源タップは使える電気機器を増やす目的で使われますが、給湯器ヘッダーも同じく、たこ足配線で使われます。LANで使用するハブや、USBポートを増やすためのUSBハブにも近い部材といえば、イメージしやすいでしょうか。
たこ足配線といっても、危険な配線ではありません。給湯器ヘッダーを使うことで、給水や温水が複数の系統に分配できるようになり、住まいの水回り工事では、メジャーな工法のひとつです。
給湯器はお湯の接続口が1つしかないタイプ(温水用)を「1温度」、温水用と床暖房用の接続口が分かれているタイプを「2温度」と表現して区別しています。
1温度は80℃のお湯が取り出せる熱源機なのに対し、2温度は60℃または、40℃のお湯と80℃の温水が同時に取り出せます。
給湯器ヘッダーと似ている部品「熱動弁」
熱動弁は異なる温度の水を振り分けるのに使われます。給湯器ヘッダーと熱動弁は設置場所が近いため、二つを混同している方も多いのですが、給湯器ヘッダーと熱動弁は似て非なるものです。
給水・給湯を集中的に分配する「ヘッダー」部分から、それぞれの蛇口に水や温水が供給され、お湯や水の調整には熱動弁を使用します。
熱動弁は給湯システムにおける水門のような役割の部品です。ヘッダー工法や分岐工法などで複数の経路がある場合、熱動弁を使って、お湯を使う場所を振り分けています。
ちなみに給湯器ヘッダーを使わない、1経路の給湯器であれば、熱源だけで温水の制御ができるため、熱動弁は必要ありません。
給湯器ヘッダーの仕組み
ヘッダー工法の場合、ヘッダーから機器の途中に分岐がないため、複数の蛇口を同時に使用しても、水量の変化はありません。そのため、1系統から複数の系統に増やしても、安定した給水・給湯が得られるのがヘッダー工法の強みです。
ヘッダー加工
給湯機械の部品には、給湯器ヘッダー以外にも、熱伝導ヘッダーやコンビネーションヘッダーなどの種類がありますが、「ヘッダー加工」とは、もともと金属を圧力で加工する冷間圧造加工のことを指しています。
給湯器ヘッダーの取付場所
給湯器ヘッダーは、給湯器やパイプシャフトなどの周辺に取り付けます。温水だけでなく、給水用にも別途給水器ヘッダーの取付が必要です。
ヘッダーと接続する住宅設備機器の間には、できるだけ枝管を増やさないよう、設計をするのが正しい方法です。前項「給水ヘッダーの仕組み」でも説明しましたが、分岐点が多くなると、漏水のリスクも増え、メンテナンスに手間がかかるからです。
給湯器ヘッダーの種類
ヘッダーには、内蔵型と外付け型、単独型の三種類があります。
- ヘッダー内蔵型
- ヘッダー外付け型
- ヘッダー単独型
給湯器はヘッダーが内蔵された(下の写真左)タイプと、ヘッダーが外付けされたタイプが主流で、それぞれに特徴があります。
ヘッダー内蔵型
ヘッダー内蔵型は、給湯器や熱源機にヘッダーを内蔵したタイプの機器で、床暖房を導入する場合は、内蔵型の給湯器を選ぶのが一般的です。
従来は外付け型が主流でしたが、熱動弁を初めから本体に内蔵することで、熱源機下のスペースが広く使えるようになり、施工性も大幅に向上しました。
ヘッダー外付け型
ヘッダー外付け型は、ヘッダーが機器の外にある給湯器のことで、内蔵型が出回る前は、このタイプが主流でした。接続は1カ所ですが、外付けの熱動弁を使うことで、床暖房と放熱機の両方に接続できます。
ヘッダー単独型
ヘッダーが独立した機器をヘッダー単独型といいます。たとえば、洗面所などの水回りに設置されたヘッダーからタコ足状に配管を配し、各蛇口に独立して接続する「さや管ヘッダー方式」では、単独型のヘッダーを使用します。
出典元:樹脂管による給水方式の開発 -さや管ヘッダー方式(UR都市機構)
さや管ヘッダー方式は、従来の分岐工法とは異なり、住戸の床下や天井にヘッダーを設置する点に特徴があります。
分岐工法(または先分岐工法)では、分岐部材を配管にネジで結合し、各水栓に配管する方式でしたが、さや管ヘッダー工法は、ヘッダー部と給水先水栓部の二カ所がメインなので、修理やメンテナンスがしやすいというメリットがあります。
給湯器ヘッダーの配管例
給湯器ヘッダーの配管例を図にしてみました。
給湯器からヘッダーを経て、キッチン、バスルームや洗面所、トイレなど、それぞれの給水栓にまでつながっているのが分かります。
給水・給湯ヘッダーを設置することで、複数の水栓を同時に使用した場合でも、安定した流量が確保できます。
給湯器ヘッダーの接続方法
給湯器でお湯が作られ、給湯用のヘッダーに流れていきますが、給湯システムには、以下のようなヘッダー部品が使われています。
給湯器ヘッダー | 温水や冷水を分配するためのヘッダー部品。 |
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分岐ヘッダー | 複数回路の配管を備えた熱源機と床暖房をつなぐためのヘッダー。 |
熱動弁ヘッダー | 高温水を低温水に変換するためのヘッダー。 |
コンビネーションヘッダー | 高温と低温を振り分けるためのヘッダー。 |
温水や冷水を分解するための分岐ヘッダーのほか、温水を冷温水に変換する熱動弁ヘッダー、高温と低温を分けるコンビネーションヘッダーなどの種類があります。
給湯器には、もともと水を温めてお湯を供給する機能しかありませんが、さまざまなヘッダーを使用することで、温水・給水を使う場所や、循環の制御が行えるのです。
給湯器ヘッダーの取付費用
給湯器ヘッダーの取付費用ですが、平均25万円~30万円程度かかります。配管の長さ、部品の数、ヘッダーケースの取付有無によって費用が変わってくるため、複数の業者で相見積もりを取ると良いでしょう。
なお給湯器ヘッダーを新たに外付けするよりも、ヘッダー内蔵型の給湯器に交換をする方がトータルのコストは安くなるケースが多いため、修理やメンテナンスではなく、新たな給湯器を設置する方は多いです。
給湯器ヘッダーの工事日数
給湯器ヘッダーの工事日数は、早ければ1日で終わります。ただし、交換する配管の数が多い場合や、特別な工事が必要な場合には2~3日、部品の取り寄せに時間がかかる場合には、一週間前後の時間がかかります。
給湯器ヘッダー接続の注意点
ホームセンターなどで給湯器ヘッダーを購入し、DIYで接続しようとする方も稀にいますが、給湯器はガスや電気などを使用するため、素人が施工をするのは危険です。
安全に使うためにも、給湯器ヘッダーの取り付けは、有資格者のいる給湯器交換業者や専門業者に依頼をしましょう。
給湯器ヘッダーでよくある質問
給湯器ヘッダーの設置や増設、配管でよくある質問を集めてみました。
- 給湯器ヘッダーが必要なのは、どんな時?
- 1系統から2系統以上にするには?
- 床暖房を増設する際、ヘッダーは必要ですか?
- ヘッダー工事は、どこに頼めば良いですか?
- 給湯器ヘッダーにメンテナンスは必要ですか?
給湯器ヘッダーが必要なのは、どんな時?
給湯・給水のヘッダーは、水の流れを一カ所から複数に分岐する際、必要な部品です。例えば、給水本管から洗濯機や洗面所、浴室、台所などに水を分配する際、ヘッダーで先に分岐させてから、それぞれの蛇口にまで水を運びます。
同じように給湯器で沸かしたお湯も、給湯器ヘッダーによって先に分岐し、お湯を使う各部屋の蛇口にまで配管を行います。
なお、給湯回路が複数に分岐している場合は、それぞれの系統でムラが出ないよう、定流量弁や流量調整バルブなどを使用し、循環する量を調整する必要があります。
1系統から2系統以上にするには?
1系統の給湯器でも、ヘッダーを使うことで2系統~5系統など、複数に分岐できます。
今お使いの給湯器の説明書にも、何系統に対応しているのかが記載されています。ヘッダーの工事や給湯機器の修理・交換の前に、温度と系統数を確認しておきましょう。
例えば「2温度低温6系統」型の給湯器であれば、高温と低温の2温度に対し、低温の接続口が6個付いていることが分かります。
床暖房を増設する際、ヘッダーは必要ですか?
床暖房を新設したり、床暖房の使える場所を増やすなど、回路を追加する際にはヘッダーが必要です。また給湯のお湯を調整するのに、熱動弁と呼ばれるバルブが使われています。
ヘッダー工事は、どこに頼めば良いですか?
ヘッダーの設置や増設、各種配管工事はガス会社、給湯器の専門業者に依頼できます。またリフォーム会社を通して、床暖房を導入する際にも、ヘッダー工事が行われます。
給湯器ヘッダーにメンテナンスは必要ですか?
給水器ヘッダーも毎日使うものなので、負荷がかかりやすく、定期的にメンテナンスをするのが望ましいです。
給湯器のメンテナンスを1年~2年に数回のペースで受ける方は多いですが、給湯器ヘッダーも一緒にメンテナンスを受けておくと安心です。
まとめ
給湯器には給湯器ヘッダーのほか、給水器ヘッダー、熱動弁など温度を調整するための部品が使われていました。
いまお使いの給湯器から、お湯が使える場所を増やしたいときには、給湯器交換業者や専門業者に依頼し、ヘッダー工法などの施工で、快適な水回りを実現しましょう。